インバウンド(Inbound)とは、訪日外国人観光客による日本国内での消費活動のことです。
インバウンドを和訳すると「外から内に入っている」という意味があり、観光用語で「訪日外国人客」を指す言葉として使われていました。
2003年に政府が「観光立国」を掲げて訪日外国人旅行者を増やす取り組みを積極的に国策でやることを発表し、インバウンドは「訪日観光客による消費活動」の意味を持つ造語に変わった経緯があります。
インバウンドの対義語「アウトバウンド」は、内から外に出て行く意味を持ち、日本国内在住者が海外旅行に行って消費することです。
政府が国策として「観光立国」を掲げた2003年の訪日外国人観光客は521万人でした。
2003年の時点では訪日外国人観光客1,000万人を目標に設定し、アベノミクスによる経済政策で歴史的円高の解消、観光査証の発給要件緩和、LCC普及などの効果で訪日外国人観光客が急増していきます。
観光立国を掲げた10年後の2013年には初めて訪日外国人観光客が目標の1,000万人を超え、2019年には3,188万人を記録しました。
しかし、2020年のコロナショックでインバウンドは激減し、2021年の訪日外国人観光客は25万人まで激減します。
2023年以降は脱コロナによってインバウンド需要が戻ってきていて、今後はV字回復以上の増加が期待されています。
【国土交通省観光庁】訪日外国人旅行者数・出国日本人数の統計情報・白書
国策としてインバウンド拡大に取り組み、成果を出していた中でコロナショックによる激減がありました。
政府はインバウンドの復活を目指し、コロナショック以降に大規模なインバウンド事業者向けの補助金で対策を講じています。
代表的な補助金が「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」で、令和5年度の場合は最大1,250万円。補助率は400万円まで10割で400万円を超える部分は5割です。
BtoCなどが対象になる一般型の場合は、観光消費拡大を図る取組など幅広い事業に対する費用が補助の対象です。
【国土交通省観光庁】インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業
2022年10月に日本円/米ドルの為替レートが、32年ぶりに1ドル150円を突破する歴史的な円安になりました。
その後は乱高下がありましたが、2023年にも150円台を付けるなど歴史的な円安水準が続いています。
円安は外国人観光客が旅行先で日本を選びやすくなる恩恵があり、歴史的な円安でインバウンド需要の急拡大が始まる要因になりました。
円安の追い風もあり、インバウンドは将来的にコロナ前を大きく上回る4,000万人、5,000万人を超えるポテンシャルを秘めています。
一方で、円安の影響で輸入品が値上げするなど生活を圧迫する物価高が起こり、政府や日銀は歴史的な円安水準に警戒感を示しています。
【日本銀行】円高、円安とは何ですか?
歴史的な円安になった最大の理由が、アメリカをはじめとした海外諸国が経済対策を見直して利上げなどに踏み切っているのに対して、日本銀行(通称:日銀)がマイナス金利などの大規模な金融緩和を続けていることです。
日本円を所有していても低金利でお金が増えないのに対して、米ドルやユーロなどの外貨で外国の国債などを買っておいた方がお金が増える状況です。
こうした日米などの金利差が拡大したことで、円を売って外貨を買う動きが加速して歴史的な円安になりました。
今後の為替レートについても、日本銀行の金融政策への取り組み内容が最大の焦点になっています。
日本は変動金利で住宅ローンを組んでいる人が多い理由などから、金利を上げた場合の弊害が多いです。
しかし、海外の中央銀行による経済政策の温度差があることから、緩やかに大規模金融緩和を見直す動きが出てきています。
インバウンド需要に影響を与える為替レートの動向が気になる方は、日本銀行から発表される金融政策決定会合のコメントや資料をチェックしておくとよいでしょう。
【日本銀行】公式サイト
前述した通り、極端な円安は輸入品の値上げや原材料の高騰を招き、延いては人々の生活を圧迫してしまう恐れがあります。
原材料や仕入価格の高騰によって起こる物価上昇のことを「コストプッシュインフレーション」といい、企業自体の利益は変わりませんので、従業員の給与を上げることもできません。
そのため、生活を苦しく感じる・贅沢ができなくなったと感じる方が多くなり、円安は悪いことという印象を持ってしまうのです。
しかしながら、輸出業やインバウンド事業は好調になりやすく、広い目でみれば日本全体の好景気に繋がる可能性があります。
とは言いましても「企業の業績が上がる→それによってスタッフの給料が上がる→お金をたくさん使うようになる」というフェーズを経る必要がありますので、円安の恩恵を感じられるまでにはまだまだ時間が掛かりそうです。
なお、政府も「補助金」「助成金」を交付するなどで急激な物価上昇に対応しておりますので、もらえる方は是非活用するようにしてください。
一時的にお金が足りなくなってしまったという方は、銀行や消費者金融、クレジットカードのキャッシング、クレジットカード現金化等もおすすめです。
もちろん、これらはお金がどうしても足りなくなってしまった場合にのみ利用すること・使い過ぎないことを忘れないようにしましょう。
インバウンド需要の拡大は様々な事業が恩恵を受けています。
特に儲かっている事業の事例をまとめました。
ホテルや民宿、旅館など。
海外旅行は宿泊が必須になり、1回の旅行における宿泊日数が長めです。
インバウンド需要の増減に大きな影響を与える業種で、インバウンド需要の更なる拡大を目指すには訪日外国人観光客が宿泊しやすい施設を増やさないといけません。
そのため、宿泊業はインバウンド向けの補助金などが特に多い業界になっています。
観光地のお土産ショップ以外にも、様々な小売業がインバウンド需要の恩恵を受けています。
昨今はインターネットの影響などで、量販店や個人商店などで売られている商品を目当てに買い物をする外国人観光客が増えています。
日本でしか買えない物を買う需要だけではなく、円安で本国より安く買える理由で日本に来た際にブランド品や電子機器を買っていく外国人観光客も多いです。
かつての飲食業は、インバウンドの恩恵がある店舗が観光地や日本食を扱うお店などに集中していましたが、昨今はインターネットやSNSの影響で様々な飲食店が恩恵を受けています。
民泊の増加などもあり、住宅街にある飲食店や日本在住の人でも入りにくいと感じる個人経営店でも、訪日外国人観光客が増えているケースが多いです。
昨今は日本のスナック文化が注目を浴びるなど、飲食業におけるインバウンドの恩恵は拡大傾向にあります。
娯楽サービスとはリゾート施設、テーマパーク、遊園地、公園、ゲームセンター、映画館、劇場、パチンコ、公営ギャンブルなどを指します。
インバウンド向け娯楽サービスは観光スポットと呼ばれるリゾート施設やテーマパークが中心ですが、ゲームセンターやパチンコなど日本人の日常的な娯楽サービスを体験しようとする需要も増えています。
観光客向けの娯楽サービスでは、インバウンド向けの補助金を活用して訪日外国人観光客の受入体制を整えている事業者が増加中です。
2023年のインバウンド需要がコロナ前を上回る予測が出ているほか、人口減少が進む日本はこの先も高い確率でインバウンドの拡大を国策として取り組んでいきます。
今後もインバウンド需要の拡大が続く見込で、2003年~2019年のような右肩上がりの成長を続ける可能性が高いでしょう。
一方で予期せぬ事態で状況が一変するリスクがコロナショックで露呈しました。
実際に廃業した事業者やインバウンド向けサービスで勤務していて失業した人が多数いましたが、補助金や助成金のおかげで持ちこたえた事業者も多いです。
国内外の大きな出来事で状況が変わるリスクが常にある業界ですが、国策で取り組んでいるため何かあっても補助金などでの救済を期待できます。
つまり、今後のインバウンドは将来性を高く評価でき、一定のリスクがあるものの補助金などを上手に活用すれば予期せぬ困難を乗り越えることが可能です。